こじろう１１７

現在、目上の人に対する　「　タメ口　（ぐち）　男」　といえば、真っ先にボクシングの

K兄弟が思い浮かぶが、その言動が最近少し　“おとなしく”　なってしまい、めっきり

「注目度」　を下げてしまったようである。その傍若無人ぶりに眉をひそめていた大人

たちも、いざ彼らが　（まだまだ十分とはとてもいえないにせよ）　多少丁寧な言葉遣

いをし始めた途端に見向きもしなくなるということで、世間とは本当に　“冷たいもので

ある”　といえるのかもしれない。　（２月１０日の　「こじろう１１７」　参照）

そんな状況をよそに、　「元祖　“タメ口”　男」　として有名な北海道出身の歌手M氏

の咆哮が、先日九州の地にとどろいた。

今月２１日に投票が行われる長崎知事選に立候補した元参院議員O氏の応援演説

に、M氏が出向いた場面である。自分は某週刊誌の報道による一部しか知らないが、

そのあまりの支離滅裂さに不思議と不快感はなく、むしろ面白くてしょうがないという

ものであった。

一応、どのくらい　“支離滅裂”　か検証してみる。

まずは、　「俺は自前で応援に来ました。俺はゼニやカネで動く男か？バカヤロー」　

というものについて。

１・最初の文で、　「俺」　という乱暴な言い方で始まっているのに、最後は　「来まし

　　た」　という、丁寧語で終わっている。

２．２番目の文で、　「ゼニ」　と　「カネ」　というのはこの場合完全に同じ意味であり、

　　なぜ　「や」　で２つを結びつけているのかわからない。また最後の　「男か？」　と

　　いう疑問は誰に対して向けているのかわからない。

３．最後の　「バカヤロー」　は、誰が　「バカヤロー」　なのか不明。

また主役のO氏に対し、　「Oはそれほどバカじゃない」　といっているが、何と比較し

て　“それほど”　なのかもつい聞きたくなってしまう。

この歌手のM氏、今でこそ５０代半ばで今回応援したO氏も年下であるが、まだ２０

代でブレイクしたての頃から、いわゆる　「タメ口」　でほとんどの目上の人を呼び捨

てにすることで有名であった。にもかかわらず、そのことで嫌悪されることはそれほ

どなかったように記憶している。またM氏が３０代くらいのとき、TV番組のインタビュ

ーのなかで、　「なぜMさんは、　“渡哲也さん”　についてだけは　“ワタリさん”　と

“さん付け”　にするんですか？」　と尋ねられると、　「だってお前　（インタビュアー

のこと）　なあ、やっぱり　“ワタリさん”　はなんといっても　“ワタリさん”　だろうが」

という、まったく意味不明の返答をしていたのもなんともM氏らしく、今でも思い出し

ては笑ってしまうほどである。

「タメ口」　を使うことでK兄弟はあれほど嫌われるのに、M氏については許されてし

まうのは一体なぜだろうか。一つにはやはり、それぞれの本業における実績・実力

のレベルがまったく異なるからだろう。

M氏の場合は、その歌唱力と曲作りの秀逸さにおいて、シンガーソングライター　（今

や死語？）　としてデビュー直後の７０年代のおわりころから圧倒的支持を得ていた。

一方K兄弟といえば、２年前の　「世紀の大反則タイトルマッチ」　以降はともかく、そ

れ以前は　“かませ犬”　のような相手との対戦、つまり出来レースのような試合ばか

りで、ボクシングの実力そのものよりもプロモーションの都合や、某民放局の節操の

ない視聴率稼ぎのためのパフォーマンスが優先されていたのは間違いない。つまり、

まだその実力について　“疑問符”　がつく段階での　「タメ口」　に対して、少なくとも

常識人たちはまず　「嫌悪感」　を抱いてしまったのだと考えられよう。

さらに同じ　「タメ口」　でも、　（　「タメ口」　というものを肯定するつもりは毛頭ない

が）　M氏の場合にはその　“生意気さ”　を補って余りあるほどの、　「人を喜ばす

“キレ”　」　のようなものを感じさせるところが、ただ単に　「嫌悪感」　だけが先にた

ってしまうK兄弟とは大きく異なるのではないかと思われる。

M氏には、最近よく出没する選挙の応援演説のときだけでなく、　「元祖　“タメ口”

男」　としてさまざまな場面でその存在感を示してほしいものである。


飼い主に対して『タメ口』を発すること
ができないのを残念がっている！？
　　　　　　　　　　　　　こじろう